「街の裏側で謎の洞穴発見!!」
 テレビからニュースが流れる。
 コッシュはセンベイを片手にそれを見た。しかし興味は沸かない。
 面倒なことはしたくないからだ。
「他に、なんかやってないのかなぁ?」
 チャンネルを色々変えてみたが、
 どのチャンネルも、そのニュースで貸切のようだ。
 いやになったコッシュは、テーブルの上のリモコンを手に取る。
 そして、テレビのスイッチを切った。
「夕飯の買出しにでも行くか」
 気晴らしもかねて、立ち上がる。
 台所にある買い物用の手提げのバックを手に取る。
 そして、玄関に向い戸を開けて出発する。
 家から、いつもの道に出た。
「今日も一日、何事もありませんように」
 そう祈りつつ歩く。
 しかし、途中で足が止まる。
「やっぱり嫌な予感がする」
 何か起こりそうな気がした。
 引き返そうと思うが、やはり夕飯抜きも無理。
 恐る恐る足を動かして行く。
 考え込みすぎて、商店街についたことに気付いてなかった。
 気が付くと、その真っ只中。
 辺りは賑わい、道には沢山の人がいる。
 肉屋、魚屋、花屋など色々揃っている。
「えっと、何を買いに来たっけ……」
 悪い予感を気に過ぎていたため、肝心な事を忘れてしまった。
 バックの中にメモが入っていることを思い出す。
 手提げバックに入っているメモを取り出そうとした。
 その時、コッシュの目の前をオッさんが去っていく。
 嵐のように去ったため、良くは見えなかった。
「何だったのだろう」
 寒気がしたが、いなくなったので安心した。
 気を取り直し、メモを取り出す。
「肉。 あぁ、今日は焼肉だ……」
 肉といえば肉屋。 肉屋を探した。
「肉屋ってここだっけ……」
 肉屋を目の前にしても一瞬わからない。
 看板がないからだった。
 ドアを手で押して開いて入った。
 バイキングのように散らばれており、
 お盆と鉄鋏みで、自由に取れるようになっている。
「どの肉を買おうかな……」
 コッシュは辺りを回りながら呟いた。
 しばらくすると、先ほどのオッさんも店内に入ってきた。
 大きいリュックを背負い、帽子を被ってセピアの服。
 まるで、洞窟に潜るかのような格好をしている。
 先ほど、入ってきたかと思えば、棚から辺り構わず肉を取る。
「あの人、トラブルメーカーじゃ……」
 コッシュはできるだけ目を当てないようにする。
 オッさんはレジに行き精算を済ました。
 それと同時にリュックサックの中へと肉を詰めている。
 詰め終わると、コッシュのほうを見た。
 コッシュは巻き込まれたくない一心で目を逸らす。
 しかし、オッさんはコッシュのほうへ近づいてきた。
「君…… いい目をしているな!」
 いきなり、妙なことを口にする。
 コッシュはその言葉に戸惑った。
「どうだ少年よ! 私とロマンの探検をしてみないか!?」
 ソウロウは大声を張り上げ、コッシュの顔を見る。
「はあ? 何を言ってんの?」
 コッシュは意味不明な言葉に苛立って答える。
 オッさんはそんなことを気にせず話を続けた。
「少年も見ただろ! まだ見ぬ未知のダンジョンを!」
 勝手に話を進めていく。
「……ダンジョンって、テレビでやっていた奴?」
 コッシュは全く興味がない話だったが、一応聞いた。
「あぁ、そうだ! あの場所にはまだ見ぬロマンの臭いがする!」
 ダンジョンが、洞穴のことだということが分かった。
「なっ、少年! 私と共にロマンを見ようじゃないか!」
「いやっ、僕は行きたく……」
 コッシュはキッパリ断ろうとした。
「そうかそうか! そんなに行きたいか!!」
 しかし、そんなこともお構いなしに話が流れる。
 オッさんは最後まで聞いていなかった。
「そうと決まれば、支度をしないとな!」
「だから、僕は行かねえって言ってるんだよ! 
オッさん!!」
 怒りがたまり、聞こえるように大声で言った。
 その後、音速の速さでパンチが飛んできた。
 ハンマーで殴られたような痛みが走る。
「イタタ…… 何をするのさ! イキナリ!」
「私はオッさんでは無い、まだ歴とした10代だ!」
 オッさんは人の話しは聞かないのに、不必要なことだけは聞こえている。
 特に"オッさん"という言葉には敏感に反応している。
「アッソ…… お兄さんだかオッさんだか知らないけど、僕は行きたくないの!」
「一度決めた事に二言があってはならぬ! いくぞ、少年!!」
 コッシュは一度も行くといってないはずなのに、決めた事になっている。
 いくら否定しても、行かされそうなので、そのまま従う事にした。
「で、早速だがな… まずは、食料調達だ!」
「さっきの様子を見ていれば、大体分かるよ」
「おお。それなら話は早い…… ならばこれを」
 どこからとも無く、オッさんのリュックと同じ形のものが出てきた。
 それを、コッシュに手渡しする。
「おっと、いけない。自己紹介が遅れたな。私はソウロウというぞ!」
「僕は、コッシュ。それで、このリュックに肉を詰めろってこと?」
「少年は頭の回転が速いな! その通りだ!」
 コッシュはソウロウの頭が悪い事を確信した。
 先ほど、調達と言っている地点で肉を詰めることは流れとしてわかる。
 レジで済ますと満杯になるまで詰めた。
「とりあえず、詰め終わったけど… 探検道具はあるの?」
 念の為、下準備が出来ているのか確認してみた。
「ああ、勿論あるぞ、懐中電灯、帽子、虫眼鏡、とかな」
「ふーん… それなら大丈夫だね。僕の分もあるんだよね?」
 自分の分もあるか確認してみた。
「無論だ。そのリュックの所に入れてあるはずだ!」
「じゃあ、出発だね!」
「おお、少年! ロマンのために行くぞ!」
 コッシュとソウロウは店を後にする。
 そして、裏側の洞穴へ向けて、出発することになった。
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