そう、果たしたことに彼らは慢心していた。 戦いは、終わってはいない。 「モヒン……」 骸骨の目は光り、コッシュのほうを見た。 狙いをコッシュに定め骨を飛ばす。 「死ね……!」 「少年! 危ない!」 「えっ!?」 ソウロウはコッシュを押し出した。 だが、代わりにソウロウがその不意打ちを食らう。 「うぉぉ――……!」 「オッさん!?」 「ソウ……!?」 コッシュとサイゾウは見た時、すでにソウロウの背中には骨が刺さっていた。 骨が刺さったまま、ソウロウはその場で倒れる。 「モヒヒヒ…… これで……」 骸骨は道ずれに出来た事を喜んでいた。 「オマエは絶対許さん!!」 サイゾウは骸骨に近づき最後の一撃を決める。 骸骨は今後こそ再起不能になった。 「オッさん…… オッさん! しっかりして!!」 「お兄さん! しっかりしてよ! 指輪…… 渡すんでしょ!」 コッシュとメルはソウロウに近づき必死に声を掛ける。 「オッさんでは…… ないと…… いってる………… 少年……」 ソウロウは必死に声を出していた。 「こんな時…… ねえ。 オッ兄さん……」 「もう、私は…… 動けない…… だか……ら………… 渡し……て……」 ソウロウは最後の力を振り絞り、指輪をコッシュに託す。 そして、一言も喋らなくなった。 「お兄さん……? お兄さん!!」 その後、地面が揺れ、天井や壁が崩れだす。 どうやら、骸骨が倒れたことと関係があったらしい。 「……今は逃げるしかない」 サイゾウは速やかに逃げると判断し、メルたちに指示をした。 「僕はいかない」 コッシュは暗くなって動かない。 「何を言っている!? コッシュ!」 「下敷きになっちゃうわよ!」 「僕はオッさんを置いてはいけない。 だから逃げるなら2人で行って」 コッシュは、ずっと俯いたまま固まっていた。 「バカを言うな! ソウロウの望みを忘れたのか」 「だって…… だって僕のせいでオッさんは死んじゃったんだよ……!? なのに……」 コッシュは振り替えて叫ぶ。 コッシュの目は涙でいっぱいだった。 「オマエが死んでソウロウが喜ぶと思うか?」 「でも…… でも!」 「でもじゃない。 今は逃げるしかないんだ」 そういうと、サイゾウはコッシュの手を引っ張り走る。 メルもその後を追いかけて走った。 途中、岩で通れなくなっている所がある。 「邪魔な岩だな、粉砕してくれる」 サイゾウは素早く刀を構えた。 「素斬(そぎり)!」 サイゾウは手早く、細やかに岩を破壊する。 すでに、砕けている洞窟なので、壁も何もかも破壊して進んでいった。 「この調子で行く……」 サイゾウは走りながら、そう呟く。 途中、メルが転んでしまった。 「大丈夫か……!」 サイゾウは振り返りメルのほうを見る。 メルの頭上に岩が落ちてきていた。 「あぶな……!」 サイゾウの位置からでは間に合わない。 「キャ――!」 コッシュが素早くその岩を蹴って、遠くへ吹き飛ばした。 その岩は壁にぶつかり粉々になる。 「もう…… 気をつけなきゃダメじゃん。 メル」 「コッシュ!?」 コッシュがメルのピンチを救った。 いつもになくカッコよく決めたコッシュに驚くメル。 「それじゃ、行こう…… 指輪を届けなくちゃいけないんだから」 コッシュはソウロウの思いを理解し、吹っ切っていく。 「そ、そうね!」 メルもまた、元気付けられた。 サイゾウたちは出口付近までやってくる。 だが、今度はコッシュが転び、指輪を放してしまった。 「あ、オッさんの指輪が……!」 コッシュは手を伸ばし指輪を取る。 体でその指輪を守った。 「大丈夫!? コッシュ!」 メルはコッシュの下に駆けつける。 「うん。 指輪も無事だから……」 「そう、ならいいわ! 早くしないと……」 2人はサイゾウの下へ歩き、再び3人で歩いていった。 すると、出口が見えて来る。 「あそこだ、出口は」 「本当だ……! ようやく、出られる!」 「ダッシュで、行くわよ!!」 そういって、全速力で走った。 ここで出られると思われた。 しかし、出口が崩れ、埋もれてしまった。 「くそっ、ウザったい、岩だ」 サイゾウは再び刀を構えて斬る。 だが、今回ばかりは中々壊れなかった。 「な、なんだ……?」 「あれ、何で斬れないんだろ……」 今まで沢山の岩を斬ってきたサイゾウの剣でも斬れない。 「堅い。 今回は一人の力では壊せないだろ」 「なら、私たちも協力するわ!」 「……よし、ならばこれを持て」 コッシュは手に持っていた指輪をバックにしまう。 サイゾウは自分の刀を、コッシュとメルに渡した。 「せーので、同時に刀を振るんだ」 「うん、わかったよ」 「了解したわ!」 2人はそう言ってうなずく。 「それじゃ、いくぞ!」 そういうと、3人は刀を構える。 「せーの!!」 3人は呼吸を合わせた。 「てぃやぁぁ!!」 そして、揃って刀を振ることが出来た。 すると、塞げたモノが粉砕され、道が切り開く。 「よしっ、今後こそ出られる」 「やっと、外の空気が吸えるね……」 「もう、こんな息苦しい洞穴、入りたくないわ」 3人はやっとの思いで洞穴から出た。 外に出た後、洞穴は完全に崩れる。 入口も少し経つと塞がった。 「……オッさん」 コッシュはため息をついた。 他の2人も悲しみの顔を浮かべた。 「だが…… もう、ソウロウは戻ってこない」 サイゾウはコッシュの肩を持つ。 「うん…… そうなんだよね……」 「だからと言って、メソメソ泣いている場合ではない。 ヤツの夢を叶えてやるのだ」 「そうだっけ…… オッさんは…… この指輪を渡すことを僕たちに託してもらったんだ」 コッシュは手で涙を拭いた。 この指輪を渡すことを思い出して気持ちを切り替える。 「それで、オッさんの渡そうとしていた人って……」 「あ、聞いていなかったわ……!」 2人はウッカリしていた。 ソウロウと帰ってきて、ソウロウが渡すと思っていたからだ。 「俺が思うには…… それはアイツの彼女だろ」 「オっさんに彼女がいたんだ……?」 何を考えていたのか、コッシュは大切な人と聞いて彼女と連想していなかった。 「で、その人って……」 「あぁ、俺に心当たりがある。 ついて来い」 サイゾウはそういうと、商店街のほうへ向っていく。 2人はサイゾウについていった。 「ここの商店街をまず抜ける」 「ここを通る意味は?」 「他の道は入り組んでて面倒なんだ」 2人はその言葉に呆れた。 とりあえず、サイゾウの言う通りついていく。 商店街の出口ぐらいまで進んだ。 「そして、ここを抜けた後は…… どっちだったかな」 サイゾウは忘れたのか悩んでいた。 「どっちだったかな、じゃないよ。 思い出してよ!」 コッシュは思い出すよう、サイゾウの首を掴んで揺する。 「そうよ、サイゾウさんが行けるって言ったからきたのよ!」 「いや…… ここに来たのは、何せ5〜6年前の記憶だからな……」 「えっ、そんな昔!? っというかサイゾウさん、今、何歳?」 昔の話しすぎてコッシュは驚いていた。 「冗談だ。 ソウロウが彼女とこっちに移住してきたのを、見かけたからな」 「何で移住してるのを見たの? ストーカー?」 「いやいや…… 俺もここの情報を聞いて、その時アイツを見かけたってだけ」 「なーんだ」 コッシュは、ちょっとガッカリしたような顔をする。 「なーんだって、何だ!」 「てっきり、オッさんのことがす……」 「俺はホモじゃない! また言ったら、斬るぞ!?」 コッシュが言いかけたところで、サイゾウがキレて怒鳴った。 「ふーん、まあ、いいや。 早く案内してよ」 コッシュは反省の色も見せず先に進むよう迫る。 「そうよ、モタモタしてないで早く!」 メルも同じく先に進むように言った。 「わ、わかった。 それではついて来い」 サイゾウは少し動揺したが、また進む事にする。 そして、2人は再びサイゾウについていった。 |
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