「ここは……」
「レジェントルームだな、あそこの台座にある」
 歪む空間を抜けた先は、あの部屋だった。
「本当だ……! 早く取りにいこ!」
「待て! もしかしたらワナが仕掛けられているかもしれん」
 サイゾウがコッシュを止めようとする。
 だが、言うことを聞かず勝手に進んでいく。
「あ……」
 コッシュは落とし穴らしきトラップに掛かった。
「言ってるそばから落ちるなよ」
 サイゾウは顔を抑えて呆れる。
「今、助け……」
 サイゾウが穴に近づき、そこに手を差し出す。
 コッシュも手を上げて助けてもらおうとした
 だが、その最中に黒い塊が飛んでくる。
 その塊は姿を変え、モヒカンが生えた骸骨になった。
「モヒヒヒ…… 指輪は誰にも渡さぬ……」
 骸骨は不気味な笑いを浮かべ、こちらを見ていた。
「貴様、何者だ!?」
 サイゾウは骸骨を睨みつけた。
「我らの指輪は渡さぬ…… 我らがコレを見つけたのだ……」
「我ら……? オマエ、1人ではないのか?」
 サイゾウは辺りを見回すが、骸骨の仲間の姿は見えない。
 なので、サイゾウは疑問を感じる。
「我らは必死に探し見つけた…… ウヌらより先にな……」
「つまり、オマエらは成仏できず、1つに固まった図太いバカな怨念ってことか」
 サイゾウは勝手に解釈する。 しかし、骸骨も否定はしなかった。
 サイゾウは腰の刀に手を当てた。
「何でも良い…… ウヌらをココで葬られるのだからな……」
「オマエらこそ、ココで成仏させてやる。 覚悟しろ」
 サイゾウは刀を抜いて構える。
「モヒヒヒ…… 威勢のいい事だ……」
 再び不気味な笑いを浮かべ、勝負の態勢に入った。
「よしっ、ソウロウ! いくぞ」
「うおぉ! 久しぶりに腕が鳴るぞ!」
 ソウロウは腕を回して間接を鳴らし、気合をいれる。
「わたしも!」
「メル、大丈夫か!? 戦いは危険だぞ!?」
 ソウロウはメルを止めるわけではなく意気込みを聞いた。
 今まで乗り越えてきた仲なので、ソウロウもメルを信じていた。
「いいわ! 今までだって散々、大変な目にあったんだから!」
「そうか、ならば、心して掛かるぞ!」
 メルの様子にソウロウも安心する。
「よし、俺たちの底力、あのモヒカンに見せてやる!」
 サイゾウが声を上げ、突撃しようとした。
 だが、そこに薄々の声が聞こえてくる。
「ぼ、僕を忘れないでよ……!」
 コッシュは必死こいて穴から出てきた。
「少年! 居たのか!?」
「居たのか、って僕ってどんだけ存在感薄いんだよ」
 コッシュは落とし穴に落ちたことすら忘れられていた。
 だが、コッシュも立ち上がり、骸骨の方を見た。
「あの、モヒ骨をぶっ倒せばいいんだよね」
「そうだ、少年! 今回はどうする少年?」
「僕も力で戦うよ! なーんか、今はすごく殴りたい気分なんだよね!」
 コッシュの目も、いつもになく真剣だった。
「コッシュにしては、珍しく、やる気ね!」
 メルは今のコッシュを見て、改めて惚れ込んだような気がした。
「まあ、痛いのとかは嫌だけど…… これで終わりなら、やるしかないかなぁって」
「何はともあれ戦力なら4人! 勝てる確率が上がったには変わらんぞ!」
「モヒヒヒ…… ザコが何人居ても我らには敵わないと思うがな……」
「オマエ……ら、との格の違いを教えてやる、影鬼斬!」
 言ってるそばから、サイゾウはすでに斬り掛かっている。
「不意打ちとは…… ひ、きょうなモヒ……!」
 骸骨は顔を抑えていた。
「どこを見ている! 私もいることを忘れるな!」
 続いてソウロウが攻撃を仕掛ける。
「だから、はやす……」
 骸骨は構えなおそうとした。
「インコングライティ!!」
 しかし、ソウロウのパンチが炸裂。
「うおぉぉ!」
 骸骨の顔面に直撃する。
 一気に勝負を決めた。
 骸骨は頭の骨が砕ける。
「やったか!?」
 ソウロウは骸骨の元へ近づいていった。
「まだ、ですよーん」
 骸骨の骨は磁石のようにくっつき、元通りになった。
 その後、腕の骨が伸びてソウロウの体に巻きつく。
 そのまま、後ろに投げ飛ばされた。
「ぐふぁぁ――!」
 ソウロウはそのまま地面に落下する。
「モヒヒヒ…… 甘いモヒ……」
「甘いのはあんたよ!」
 メルはデカい石を拾って、後ろから頭目掛けてぶつけた。
「モヒ――!」
 骸骨の頭に石がクスがる。
「なーんてね。 お嬢ちゃん。 大人をなめちゃいけませんよ……」
 骸骨は頭にクスがった石を簡単に抜いた。
 その後、メルをソウロウと同じく掴み投げようとした。
「キャ――! 放せ、このクソ骸骨!」
 メルは捕まっても、恐かった。
「おい、モヒ野郎! メルを放せ!」
 コッシュはメルを掴んでいる腕にすぐさま向った。
 だが、その途中、出っ張ってる石につまずいた。
「いたたっ…… なんで僕って肝心なときコケるんだろ」
「モヒヒヒ……? この猫がそんなに大事かモヒモヒ……?」
 骸骨は不気味な笑みでコッシュを見る。
「いや、大事というかなんというか」
「コッシュ、助けてよ!」
 メルは掴まれていても必死に足掻く。
「うーん、どうでもいいんだけど……」
「何言ってるの! 早く助けなさいよ! 助けないと後で……」
 コッシュの態度に、メルは激怒した。
「猫は黙っていろモヒ」
「とりあえず、メルは僕の大事な……」
 言いかけたところで、骸骨の腕に飛びつき、頭へ回し蹴りをかました。
「……ぐへ、なんてパワー……だ……!」
 メルを掴んでいた腕は緩む。
 その隙にメルは離れて着地した。
「俺流・痺斬!」
 その後、サイゾウも骸骨がひるんでいる隙に攻撃をする。
「……ウヌらは稀に見……」
 骸骨はさらにひるんで動けなくなっていた。
「まだ、息をしているぞ。 ソウロウ!」
 サイゾウがソウロウに合図を送る。
 ソウロウは口に肉充電を行っていた。
「インコンファイナル!」
 ソウロウはこの拳に懇親の一撃を込める。
「な…… ぬぁぁ――!!」
 その一撃をくらい骸骨は倒れた。
 これで全ては終わる。
 そう、4人は思っていた矢先……
「……なーんてな。 我らはその程度で死なぬ……」
 再び骸骨は立ち上がってきた。
「まだ、生きているのか!」
「信じられん……」
「しつこい男は嫌われるわよ!」
 3人は唖然として骸骨を見ている。
「死ね、モヒ骨」
 コッシュは黒い一言を言った。
「密かに、恐ろしいことを言うな…… この子供」
 さりげなく、口にしているコッシュに、サイゾウは恐怖を覚える。
「そろそろ…… 我らも本気でいかせて貰おうモヒ……」
 骸骨はそういうと、モヒオーラが出てきた。
「今までは手加減してたというのか!?」
「何なんだコイツは……」
 両手を伸ばしサイゾウとソウロウに巻きつき回転して投げ飛ばす。
「モヒヒヒ…… 少しは効いたか……?」
「痛くもかゆくも…… ない。 なあ、ソウロウ……」
「ああ。 私たちにはそんな攻撃はもう通用しないぞ!」
 2人は気合いで立ち上がった。
「負け惜しみを……! ボーンフリーザ……!」
 今度は腕の骨を外し、2人に向って飛ばしてくる。
 2人は骨が飛んでくるのを見計らい、素早くかわした。
「な、なんだあの骨……」
「凍りついたな! 食らったら一溜りもなさそうだな!」
 2人は振り返って、その骨に当たった後を見てみる。
 岩や石などの直撃した部分が凍りついていた。
「えっと……」
 コッシュは虫眼鏡を取り出し、弱点を調べている。
 ソウロウたちが注意を惹き付けている間に。
「あ、あの骸骨。 右の目辺りが弱点だよ」
 コッシュは調べ終え、ソウロウに伝える。
「わかった」
「行くぞ!」
 ソウロウとサイゾウは骸骨に突撃をしていった。
「バカめ……! ウヌらの考えている事はわかっている……!」
 再びソウロウたちに骨を飛ばす。
 2人はかわしてばかりで反撃はしなかった。
「コッシュ! いくわよ!」
 メルはコッシュの足を掴む。
 それから、骸骨の方へ投げた。
「でやぁぁ――!」
 コッシュは骸骨の右目に向ってパンチを繰り出す。
「んぎゃ、モヒヒ……!!」
 コッシュのパンチは見事、右目に命中した。
 骸骨はそのまま吹っ飛んでいった。
「やった……か……?」
 ソウロウが息を切らせながらいう。
「…………モフ……」
 そのまま骸骨は動かなくなった。
「みたいだね……?」
「それじゃ、ソウロウ。 指輪を取って来い」
 他の3人はソウロウを見守った。
 戦いが終わり、ソウロウは台座に向かう。
「あ、ああ! ここまで付き合ってくれてありがとうな……!」
 ソウロウは指輪を台座から取った。
「すごい輝きだ……」
「本当…… 綺麗だね……」
 指輪は真珠のように輝いていた。
「だな。 この指輪は世間ではクリスタル・パールと呼ばれている」
 サイゾウがそれを見て言う。
「え、なんで?」
「真珠のような水晶が地揺れで砕け、その破片が指輪に変化したらしいからだ……」
 サイゾウが説明をした。
「そうなんだ……」
 コッシュはそれを聞いて、胸が熱くなる。
「何か、神秘的でロマンチックね」
 メルもそのことに胸を躍らされた。
「それでは、帰るか……」
「そうだね! お兄さんは、その指輪を届けなくちゃいけないし!」
「それじゃ、早く帰るわよ!」
 目的を果たす事ができた。
 彼らの冒険はコレで終わった。
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