「えっと、この山が渦を巻いたようなところだっけ?」
「そうだ、少年! そこにナトアがあるぞ!」
 山沿いを歩いていき、山の切れ目の渦上の入り口に差し掛かる。
 そこはジャリをしいたかのように続いている。
「あれ、何コレ?」
「山を削って作ったから、その残りだと思うよ」
 フアンは普通の答えを返す。
「あぁ、そっか。 もともと、ここは山の地帯だったってことか」
「防御面でも、山に囲まれている方が安全と踏んだんだろうね」
「うん、そうだね。 それじゃ、いこっか!」
 コッシュがそう言うと、再び歩き出す。
 そして、ナトアについた。
 そこに、なぜかナトアの人がやってきた。
「お待ちしておりましたぞ、ソウロウ殿!」
「うわっ、お兄さん有名人!?」
 コッシュはワザとらしく驚く。
「違うぞ、少年! 先日来た時、世話になったからだ!」
「いえいえ、こちらこそお世話になりまして……」
 その人は謙虚な態度で返した。
「何をしたのさ、お兄さん?」
「ソウロウ殿は山壁が崩れた時、突然、現われて壊してくれたんですよ」
「へぇ…… お兄さんらしいや!」
「たいしたことじゃなかったんだが…… その後、ご馳走になってな!」
 ソウロウは嬉しそうに言う。
「肉を大量に食べたと?」
「よく、わかったな、少年! さすが、私が見込んだだけ、あるぞ!」
 高々気に言ったソウロウ。
 コッシュは苦笑いをする。
「で、本題のフロッグって言う穴は?」
「そうだったな! 長老殿、それについて説明してくれ!」
「準備は万全です、ソウロウ殿。 新王と他村の者はこちらでゆっくりと」
 さらりという長老。
「あれ…… フアンのこと言ったっけ僕たち?」
「言ってないわよ。 何で、わかったの?」
「ソウロウ殿がここに戻る時は新王を連れてくると仰ってましてね」
「うわ、気が早いよ、お兄さん! まだ戦ってる最中に」
 コッシュは、ソウロウのあまりの先走りに驚く。
「ここまで先を読むとは、さすが大物の器は違うね」
 フアンが横で笑って言う。
「いやぁ、義理の兄フアンに褒められるとは光栄だ!」
「それで…… フロッグは、正面に行ったところの広場にあります」
 前には、3本道があり、左、真直ぐ、右とそれぞれいける。
 ナトアの長老は真直ぐに進み、それに続いて3人が行った。
 コッシュとメル、ソウロウがついて行った先には広いスペースがある。
「あの穴がフロッグです」
 ここの長老が指した先、正面中央に大きい洞穴がある。
「あんな堂々と…… 間違って入ったりしたりしないの?」
「それはないですよ。 ここは必要時以外、開きませんので」
「ってことは、何か開く方法があるんだ?」
 コッシュは感づいて聞いた。
「そうです。 メタルフラグメントと呼ばれる、転移の金属破片を使います」
「あぁ。 オッさんが言ってたヤツか……」
「それなら、ここでなくても出来たんじゃない?」
 メルは疑問が浮かんで聞いた
「駄目です。 むやみに開くようなことは禁じられております」
「何でも、適当な場所で開くと世界の破滅が起こるとかな!」
「そうなんだ。 だからココまで来て開いたのね」
 メルは納得する。
「そうだ! まぁ、願いで来た場合は問題ないらしいがな!」
「そんじゃ、僕たちは帰ろう!」
「そうね。 そろそろ、さよならを……」
 そう言って3人は穴に入ろうとした。
 しかし、その時フアンがやってくる。
「待って。 3人とも!」
「あ、フアンさん。 どうしたの?」
「最後に別れの言葉をね。 王として、それから友として」
 フアンとも最後の別れ。
 どうしても会いたかったようだ。
「そっか! さようなら、フアンさん!」
「さようなら、コッシュ! 君と会えてよかったよ!」
 コッシュはそういってフアンと握手する。
「もう会えるかわかんないけど、フアンさん、またね!」
「あぁ、メル。 コッシュと上手くいくことを祈っているよ!」
「え…… あ、もう、フアンさんったら」
 メルはいきなりの発言に戸惑った。
「え、何のこと?」
「別に、どうでもいいことよ! それじゃあね、フアンさん!」
 メルとフアンは互いに手を振って終わる。
「セラは私が責任を持って幸せにするから、安心してくれ!」
「あぁ、頼んだよ! 君なら心配ないから!」
 フアンはそういってソウロウの肩を持つ。
 それで離し、3人は穴に入る。
「それじゃ、本当にさようなら、フアン!」
「うん、バイバイ! 3人とも」
 その言葉と共に、3人は穴へと入っていった。
 しばらくフラフラし、目の前が真っ暗になる。
「……ここは」
 気が付くと、そこはコッシュの家。
 彼らは無事に戻ってこれたのでした。
 その後はご想像にお任せします。
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