3人は歩いて、再び洞窟にやってきた。
「うーんと…… まだ、1日しか経ってないって言うのに懐かしく感じるなぁ……」
「多分アレだ、少年! 仲間が増えたからだろう!」
「そうね。 それじゃ、入るわよ!」
 メルは入る気満々で洞窟の中に向かう。
「メル、勢いがいいね……」
「うるさいわね! 早く来なさいよ!」
 振り返って、コッシュの腕を掴んだ。
 そして抵抗させないように抑えて、強引に連れて行く。
「本当、ネコむす…… いや、メルは元気がいいな! 私も負けてられんぞ!」
 ソウロウもメルのやる気を見て、武者震いをしながら入っていった。
「……あ、そういえば、おっ、兄さん。 前は敵がいなかったよね。 今回も……」
「それは分からんぞ、たまたま出てこなかっただけかもしれないしな!」
「え? わたしが前、来たときはウジャウジャいたわよ?」
 その言葉に2人は耳を疑った。
「それで、どうしたの?」
 コッシュはまさかと思ったが、一応、聞いてみた。
「全部ナギ倒してやったわ! キモいしウザイし」
「おお、それは頼もしい!」
 ソウロウは手を叩きながら褒める。
「メル……、お兄さんと互角に渡り合うだけあって、やることが凄いなぁ……」
 コッシュは小声で言った。
 しかし、メルの耳が微かに動く。
「何か言った? コッシュ?」
 メルの目が恐かった。
 いつもは余計な事を言って殴られている。
 しかし、今回は上手くごまかすことにした。
「え? 何にも言ってないよ?」
「そう、ならいいけど……」
 そうこう話していると、以前と同じ分岐点に差し掛かる。
「よし、右だな!」
 ソウロウが真っ先に言った。
「いや、左だよ!」
 コッシュも対抗して言う。
「どっちよ……! ……わたしの記憶によると、左ね」
「何だと! 私の言う事が信じられないのか!?」
「いや、前そっちいって、岩が転がってきたじゃんか!」
「あ、わたしも、1人の時、そっち行って転がってきたから、急いで引き換えしたわ」
「そうだったか! まあ、探検家には間違いもあるさ! 気にするな!」
 ソウロウはその場を笑ってごまかした。
「何だよ、コイツ。 自分の間違いは笑って誤魔化すのか」
 2人は白い目で口を揃えて小声でいう。
「それでは、左に進むとしようか!」
 ソウロウが、そういうと、3人は左へ進んでいった。
 すると前回も見た、小部屋に着く。
「確かこの部屋、ワナがあったんだよね……」
「だから気をつけるんだぞ!」
 ソウロウは前に出て罠を確かめる。
 そこで、コッシュは思い出した。
 前、貰ったボムワンド、というものを取り出す。
 そして、それを試しに振って使ってみることにした。
「えいっ!」
 コッシュはボムワンドを垂直に振る。
 すると、天井より下の空間に無数の爆弾が出現した。
 それらは落下し、地上で花火のように爆破する。
 その衝撃で、部屋にいくつか設置されているワナが壊れた。
「うわぁ! 何かコレすごいね」
「少年、もうその杖の使い方を覚えたのか?」
「いや…… 使い方も何も、振っただけだと、わたしは思うけど」
「あ…… そういえば、説明書見てなかった!」
「それじゃ、見てみるといいぞ!」
 ソウロウはそういうと、コッシュのリュックから説明書を取り出す。
 そして、そのボムワンドの説明書を広げた。

――取扱説明書
   これは、エコエネルギーを使って爆弾を作り出す杖。
   軽く振ると、正面の上から爆弾を無数発射できる優れもの。
   ある木の実で永久に使うことも可能。
   通常の使用回数は5回まで。
   ちなみに、ある木の実とは。洞窟でとれるダムの実。
   ダムの実は洞窟の岩と岩の間に生えている雑草のようなものの実。
   図も下に添付してあるので、それで確認しよう。

「ってことは、僕は今使って……」
「後、4回ってことだな!」
「あらら、無駄遣いをしたわね! 勿体無い……」
 メルは呆れて、よそ見をした。
 その先に、木の枝のようなモノが岩の隙間から出ている。
 それを、じっと見つめ、説明書の添付図と比べる。
「あれ…… これっ、ダムの実じゃない?」
 似てると思ったメルは、それを指差して伝えた。
 ソウロウとコッシュも近づいて見てみた。
「うーんっと。 この絵と…… あ、確かに!」
 コッシュも手元にある図と、その木を照らし合わす。
 それは確かにダムの実の図と一致していた。
「わたしの手柄ね! 少しは感謝してよね!」
 メルは鼻を高くし、自慢げに言う。
「おお、さすがだメル! これで探検も楽になるぞ!」
「どうせ、たまたま見つけただけなクセに…… ブツブツ」
「ウルさいわよ! 何でもいいじゃない!」
 メルはコッシュの顔面を3、4発ほど殴った。
 コッシュは顔に腫れが出来た。
「それじゃ、とりあえず進むとするか! 少年とメル!」
「うん」
「そうね、安全に進める道も出来たわけだし」
 3人は進んでいった。
 だが、前とは違うところがあった。
「うわ…… 道が三つに分かれてるよ!?」
「そうだな…… 前は坦々と道が繋がっていただけなのに……」
 ソウロウたちが来た時とは違い、今回は道が左直右の3つに別れていた。
「えっ? わたしが来た時は…… 確か左右の2つだったわよ?」
「なぬ! それは本当かメル! では、それのどっちが当たりだったのだ?」
「……どっちもハズレだったわ。 右はトゲだらけ。 左は毒沼地獄だったし」
「もしかしたら、あの例のモンスター…… の術で道が変わっていたとすれば……」
 コッシュは思い返して、機転を利かす。
「何? そのモンスターって……」
「あ、偽の指輪をエサに吊ってくるタチの悪いモンスターっていう奴だよ」
「そういえばそんな話してたわね。 それで、ソレと何か関係があるの?」
 メルは更に聞き、そこにソウロウが口を挟む。
「私の考えが正しければ、道は変わってはいないってことだ! 右と左は偽者だな」
「えっ、でもさ。 メルがいた時は右と左で…… 真ん中はなかったんだよ?」
「それは、罠に引っかかった獲物以外を入れさせないための術だろう!」
 つまりソウロウが言いたいのは、真ん中がモンスターの部屋に繋がっていた道。
 メルが来た時は、戦闘中だったため術によって隠されていたということだ。
「なるほど! それじゃ真っ直ぐだね。 オッさん冴えてる〜!」
 コッシュは嬉しさあまり、口が滑って禁句を言ってしまった。
「オッさんでは無い!!」
 ソウロウは、いつもの勢いでコッシュを殴り飛ばす。
 コッシュは真っ直ぐ奥へと飛んでいってしまった。
「あ! 私としたことが…… 待ってろ少年!」
「アンタがフッ飛ばしといてよく言うわね…… コッシュ、無事かしら……」
 コッシュが危険な目に合うかもしれないので、
 急いで、2人は走って追いかけた。
「いったた……」
 コッシュは意外に近くにいた。
 くねった場所が壁になりに、それほどフッ飛んでいなかったようだ。
「少年! 大丈夫か!?」
 ソウロウはコッシュの首と背中を手で持ち上げ声を掛けた。
「うん、何とか……」
「よかった……」
 メルもコッシュの無事を見て一息をついた。
「メル! 心配してくれたの?」
「べ、別に心配なんかしてないわよ……! 早く行くわよ!」
「そぉだよね。 メルが心配するわけが……」
 コッシュが言いかけた所、メルが数発殴った。
「もう、コッシュなんか知らないわよ! お兄さん、早くして!」
「あ、あぁ…… わかったぞ!」
 ソウロウは呆気にとられながら、コッシュの手を持つ。
 それから起こして、再び進むことにした。
「やっぱり、こっちの道であってたみたいね!」
「うん、そうみたいだね」
「と、なると、またあの部屋に着くわけだが…… 今はどうなっているんだろうな!?」
 ソウロウは再びモンスターが復活し、襲い掛かってくることを心配した。
「一回負けたんだから、出てこないよ! きっと」
「そうだな! よし、行くぞ、少年とメル!」
 コッシュの言った事も一理あり、ソウロウはそうであることを祈った。
 そして、進んでいくと、やはり、あの部屋があった。
 しかし、コッシュの予想通り、モンスターの姿はなかった。
 だが、前回、来た時はなかった階段が中央にあった。
「ふーむ…… この階段を下りて行けということか!?」
「そうみたいだね…… 他に行く道もないし」
「それじゃ、いくわよ!」
 3人は階段を下っていった。

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