「うぉ! ワクワクしてくるな! 少年!」
 階段を下りながら大声を張り上げるソウロウ。
「うん…… 僕には、よくわかんない。 その気持ち」
「しゃべってないで、降りるわよ」
 話をしながらも、3人は階段を下まで降りた。
 すると、バーのような場所に差し掛かる。
 その先に、バーテンダーのような格好をした人がいた。
「いらっシャイン〜。 お客様、3名ですね〜!」
 その人は3人をお客として気前良く迎えいれてくる。
「誰……?」
「ワタシ、ここのマスターやってい〜る者であります!」
「何やってんの?」
「見ての通り、疲れてきた人のために、ドリンクを無料で提供してるんですよ!」
 無料提供と、看板にも書かれていた。
 カウンター席もあり、座ってゆっくり出来そうな感じだ。
「へぇ…… どうする、メル? 後、お兄さん」
「そうだな……! 喉が渇いたか? 少年! メル!」
「うーん。 微妙」
「わたしも」
 2人は乗り気でなかった。
「だが…… これから水分補給が出来ないかも知れんぞ!?」
 ソウロウもあまり喉は渇いていなかったが、
 後のことも考えてここは飲んでいくべきだと2人に勧める。
「そうですよ。 このお兄さんの言うとおり、先に何があるか分かりませんって。
 マスターも妙にドリンクを勧めてきた。
 無料でやっているため、収益があるはずも無いのに、っとコッシュが呟く。
 だが、ソウロウの言い分も一理ないこともない。
「それじゃ、僕は飲むよ」
「コッシュが飲むならわたしも飲むわ!」
 2人はこれから先を考えて席に着く。
「はい〜、わかりましたよ! それじゃ、ご注文は何でしょうか〜?」
「そうだね…… 何があるの?」
 コッシュはマスターに種類を尋ねる。
「オレンジジュースとかメロンソーダとかありますよ!」
「んじゃ、オレンジ!」
「わたしも!」
「私はメロンソーダだな!」
 3人は連続して声を上げ、注文する。
「はいっ、それじゃ少しお待ちを!」
 そういうと、店の奥に入っていった。
「ふぅ…… この先は何があるんだろうね、お兄さん」
「入った所からあれだけトラップがあったからな……」
「複雑な仕掛けとか、あったりするんじゃない?」
「そういうことになりそうだな!」
 そんな話をしていると、お盆の上にジュースの入ったコップを持って、
 奥から、カウンターのほうまで運んできた。
「おまちドーンです!」
「ドーンっていうとコボしたみたいだね……!」
 コッシュは思わず吹いた。
「そーですか? まあ、喜んでもらえたようでよかったです!」
「えーっと。 これ飲んでいいの?」
「いいですヨ〜ン! お客様のご注文ですから」
「それじゃ、いただこ! メルとお兄さん!」
「そうだな、少年!」
「うん、そうね!」
 そういった後、ジュースを飲み干した。
 飲んでいる途中、店の人がカスかに笑ったような気がした。
 その後、ソウロウがあくびをした。
「……うん…… 少年、何だか、ねむ……」
「僕も…… 何か眠気が…… どうしちゃったん……」
「……2人ともどうし……」
 3人とも飲んだ後、その場で眠ってしまった。
 そして、何時間か過ぎた。
「……うーん」
 コッシュは眠りから目覚めた。
 起きたときには、手足を縛られている。
 そこは牢の中で、鉄柱で塞がっていた。
 床も冷たく、出口と言う出口は無い。
「あれれ…… ここは……?」
 辺りを見渡すと、ソウロウとメルも倒れていた。
 2人も手足を縛られている。
 コッシュは2人に近づいて声をかけた。
「お兄さん! メル! 起きてよ!」
「んん…… ここはどこよ……」
「私たちは、ジュースを飲んでいたはず……」
 コッシュの声に反応して起きる2人。
 3人は辺りを見渡し、足音が聞こえたくる。
 そして牢の前に、怪しい者たちが現われた。
「貴様達は我等の策に掛かったのだ。 睡眠薬入りをな。 愚かな者たちよ」
「貴様ら何者だ!?」
 その者たちに声をぶつけるソウロウ。
「我等は、洞窟に住む者。 奥に進む者を阻むもの」
「わたしたちをどうする気よ!?」
「貴様達は我等の飯となる。 もうすぐな」
 その者たちは3人を見て、あざけり笑う。
「ふざけるな! 出せ、出しやがれ!!」
 コッシュは必死にオリを破ろうとした。
 しかし、開けることは出来なかった。
「万事休す…… か……。 すまない。 少年、メル、私の不注意で……」
 ソウロウは隅のほうで、死を覚悟した。
「ちょっと! 諦めないでよ。 わたしはまだ……」
「うるさいヤツらだな。 静かにしてろ!」
 すると、今度は他の仲間がやってきた。
「おいっ! 準備できたぜぇ!」
「そうか、それじゃコイツら連れて行くか!」
 そういうと、牢屋の扉を開け、3人を力ずくで引っ張る。
 手足を塞がれているため、どうにも身動きが取れない3人。
 3人は謎の部屋まで連れて行かれる。
 そこには巨大な釜戸があった。
「な、なんなのあれ!?」
 コッシュがメルのほうを見て言う。
「わたしに聞かないでよ!」
「……あれで私たちをフライにする気か」
 釜戸の目の前まで移動させられる。
 中を覗くと大量の油が煮えたぎっている。
「ちょ…… 熱そう!」
「油なんだから、熱いを通り超えてるわよ……」
 悪者たちは3人の体をロープでつなぎ合わせた。
「よしっ、持ち上げろ!」
 そのままロープで吊るし、釜戸の上に浮かされる。
「メル…… ここでお別れだね」
「……コッシュ、泣きごと言わないで」
「色々あったが…… いい生涯であった」
 そして、吊るしているロープを切り、油の釜戸に落とそうとした。
 その時、黒い影が風のようにやってくる。
「……」
「誰だ、貴様! ヤツらの仲間か!」
「クズに答える筋合いは無い」
「な、なんだと……!」
「もっとも、既に死んでいるのだから言う必要も無いがな」
 影の男は、斬った刀を鞘に収めた。
「俺流…… 影鬼斬(カゲキギリ)!」
 敵は、その場で白めになりバタバタと倒れていった。
 外傷という外傷も無く、血の一滴も流れていない。
「あの技は…… まさか……」
 ソウロウはその者に心当たりがあった。
「ちょっとあんた、早く降ろしなさいよ!」
 メルはロープで吊るされながらも影の男に文句を言った。
「助けてもらってその言いグサか。 いいだろう、降ろしてやる」
 そういうと、ロープを引き上げ、釜戸から離れた所に降ろした。
「……ふぅ。 生きてるね、僕たち……」
「当たり前よ! 死ぬなんて考えられないわ!」
 生きていたことに、2人はホッとした。
「俺が来なければ、こんな小さな子供が命を落としていた。 バカげている」
「……確かに、その件については礼をいう……」
 ソウロウは男に頭を下げた。
「オマエに礼を言われる筋合いは無い」
 さらに付け足して言う男。
「それにオマエはライバルといえん。 バカ。 それだけだ」
「バカバカって! そんないいかたないじゃないか!」
 ソウロウに対して、あまりにヒドイ言いぐさだったので、コッシュは怒る。
「ふんっ。 お前はそんなヤツを慕うのか。 危うく殺されかけたヤツに」
「オッさんは確かに何でもかんでもつっこんで行く……」
 コッシュはその時、手をグっと握り締めた。
「けど、だけど、僕たちはこんなオッサンでも尊敬しているんだ!」
 そして、大声で思いをぶつけた。
「少年……」
「わかった。 別に、俺には関係ない。 俺の目的は指輪のみ」
 そういうと、スゴイ脚力で飛んで行く。
 そして、姿が見えなくなった。
「……えっ、あの変なのも指輪狙っていたの?」
 コッシュは真面目な顔から一転、ボケ顔に戻った。
「そうみたいね…… それよりお兄さんとどういう関係なわけ?」
 メルは因縁のありそうな関係なのが気になって聞いてみた。
「ヤツは私のライバルであり…… 昔は良き親友であった」
 ソウロウは過去を語りだした。
「……まあ、今となっては憎まれ口を叩かれるのが落ちだがな!」
 語りだしたのも束の間。 あっという間に終わる。
「いつから、あんな感じになったの?」
「あれだ…… 私が最後の一枚の肉を食べてしまった時からだな……」
 ソウロウは真面目な顔をして言った。
「うわっ、それを根に持っているんだ!?」
「今は知らんが、ヤツも当時、肉好きだったからな!」
 原因はソウロウとはいえ、ライバルの男がそんなことで、と呆れる2人。
「……ふーん。 まあ、いいや。 助かったし」
「そうだな、少年。 そういえば、ボムワンドはどうした?」
「あっ! ……って、そこに倒れている人が持ってるよ」
 倒れているというより、あの男に斬られて死んでいる。
 その者の手からボムワンドを取り返した。
「よしっ、それじゃ気を取り直して進むとしよう!」
「おう!!」
 しかし、ここに連れてこられて進む道を見失った。
「道が分からん。 あっちに穴があるから行って見るとするか!」
「そうだね!」
 奥に穴があったため、3人はそこを進んでいくことにした。

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