「……ここは、どこ?」
 メルは気が付くと、外にいる。
 だが、周りは見たことの無い光景。
 メルの近くにコッシュが倒れていた。
「コッシュ、起きて! コッシュ!」
 メルはコッシュの体を揺する。
 すると、コッシュも目を覚ました。
「あ、メル。 おはよう」
「寝ぼけてる場合じゃないわよ、何か知らない場所に来ちゃったわ!」
 コッシュもそういわれ、周りを見る。
 近くにはトタン壁とボロい屋根の家がある。
 地盤が少し避けているところもあり、鉄クズが転がってたりもした。
「ここ、どう見ても僕たちが住んでるところとは違うよね」
 コッシュは苦笑いしながら言う。
「というより、コッシュの家から来たのよ。 おかしくない?」
 不審な階段から来たとは言え、明らかに別の場所。
「おかしいよね。 とりあえず、ここの情報を手に入れないと」
 そこで近くの家から誰か出てきた。
「早く準備に取っ掛かって、金属を作るんじゃ」
 そこから出てきたのは老いた人。
 ヒゲを生やしており、桑を手に持っている。
「あの…… こんにちは」
 メルが先に老人に話しかける。
「こんにちは、何か御用かね?」
「何をされるんですか?」
 メルが不思議そうに尋ねた。
「何って、金属の栽培じゃよ。 金属を年貢に収めねばならぬからな」
 老人は金属栽培という謎の言葉を平気で発する。
 さらには、金属が年貢になっていた。
「栽培!? 金属が実るんですか?」
 メルがそういい、2人は同時に驚く。
「常識じゃろうて…… っと、よく見るとお主たち、見かけん顔じゃな?」
「……それがですね」
「色々あったんだよ」
 2人はここに来た経緯を話した。
「フムフム。 なるほどのぉ。 で、お主たちはここに突然送り込まれたと」
「はい、そうです」
「そうか…… ではここの仕来りなどを話そう。家にお入り」
「ありがとうございます、ではお邪魔します」
 2人はお辞儀して、先程この老人の出てきた家に入る。
 部屋は1部屋で、階段もなく座敷があるだけだった。
 座布団も金属で出来ているようで冷たそうだ。
 長老が奥の座布団に座り、他2人が手前の座布団に座った。
「では、始めよう。 とその前に、ワシはここの長老じゃ」
「僕はコッシュ、でこっちがメルだよ!」
 3人は自己紹介から始めた。
「そうか。 ではコッシュ、メルよ。 今から話すぞ」
「うん、お願いするよ。 長老さん」
 2人はおとなしく長老の話を聞く。
「まず、ワシたちが住む全域をメタリックワールドと呼んでおる」
「メタリックワールドかぁ、つまり金属の世界ってわけね」
 コッシュは勝手に解釈をした。
 長老はそのまま話を続ける。
「それで、ここや他村では金属栽培を行っておる。 軍に収めねばならんからな」
「そうそう、それでその金属栽培って何なの?」
 先ほど出た金属栽培が気にかかったコッシュ。
「金属のタネを撒き、水をかけ土を耕し、金、銀、銅、錫、鉄の五金を作るのじゃ」
 長老はその過程を説明する。
 それはまるで植物栽培をするようなもの。
「えぇ、そんな植物じゃあるま…… ありえるのか、きっと」
「そうよね…… この世界には金属が多いわけだし」
「それから軍とはな……」
 さらに長老は話をしようとした。
 だが突如、外から警報音が鳴る。
 長老を除く2人はビクっとした。
「来たか! とりあえず、お主たちはここで待っていなされ」
 その音と共に長老は外に出る。
 2人は息を潜めながら窓から覗き見た。
「取立てに来てやったぜ。 さっさと年貢の金、銀を寄越せ」
 取立て屋は馬に乗って歩いてくる。
 1人は悪人ヅラで、偉そうな格好をしていた。
「ん! 何者じゃお主らは!?」
 長老はその姿を見ると、途端に驚く。
「今日から、ここの国を治めることになったビフラ様よ!」
 ビフラは腰に手を当て、あごを上げて声を張り上げる。
 隣には子分らしき男がいた。
「そしてあっしはビフラ様の右腕、アエスでっせ」
 こちらも偉そうに自分の名前を言う。
「何だと! それでは先王は……」
「俺様が殺したのよ。 ま、戦で打ち勝ったんだがな」
「くぅ…… ではお主が今の王であるか」
 長老は嫌な顔をして言う。
「そぉよ! だから早く出せ。 さもなくば斬るぞ?」
 ビフラの目は尋常ではなかった。
 鞘が手に行き、今にも切りかかりそうな様子。
「しかたない。 村の集よ。 今月実った金銀を渡すんだ」
 長老は振り返り、出てきている村の人に声をかける。
 村の人も長老は慕っており、素直に言うことを聞いた。
「長老……、わかりました。 こちらです」
 そして、皆が手をこめて育てた金銀を差し出す。
 しかし、それを見たビフラは顔をしかめて言う。
「何だ、これだけか? もっとねぇのか?」
「以前の王はコレだけ収めればいいと」
 長老は困った顔をしていた。
 だが、ビフラは顔をさらにしかめて言う。
「違う! 今の王は俺様だ。 俺様が満足するまで出せ!」
 ビフラは剣を抜いて振り上げた。
 村人は脅えて一度家に戻り、あるだけの金銀を手に持ってくる。
「こ、これで全部です」
「全部でこれだけだと? まぁいい。 運び出せ」
 ビフラは振り返って合図を出す。
 すると、後から金属の鎧兵が無数にやってくる。
「次はもっと用意しておくんだな。 先王のように甘くは無いぞ!」
 そういってビフラは去っていった。
「決して逆らおうなんて考えんじゃないっせ。 ビフラ様はコワいっすからな」
 右腕のアエスも軍と共に去る。
「ふぅ…… 大変じゃ、金銀が無くなってしまっては」
「食べ物を手に入れる手段が減ってしまった」
 ビフラ軍が去った後、村人たちはざわついた。
 コッシュとメルが家から出てくる。
「あれが、王なの? すっごい悪党に見えたけど」
「今はそうなってしまったようじゃ。 村の金銀は根こそぎ取られた……」
 長老は悲しげにうつむく。
「この世界の金銀もスゴい価値があるんだね…… でもまた作れるんでしょ?」
 コッシュは栽培ですぐに出来るモノだと思った。
 しかし、世の中そう簡単にいくものではない。
 長老はしわを寄せ、コッシュに説明する。
「作れるが、金銀は育てるのが難しいんじゃ。 世話がかかるモノなんじゃよ」
「長老、この子らなんです? この辺では見かけませんけど」
 村人の1人はコッシュとメルのことを長老に聞いた。
「この子たちは異世界からの訪問者じゃ。 何故だかはわからんがの」
「い、異世界!? ってじゃ、この世界の人じゃないってことですか!?」
「たまげたわ! 別世界なんてもんがあるなんて」
 村人たちは違う世界からきたと聞いて驚き、慌てる。
「いや、僕たちもビックリしたんだよ。 色々と」
 コッシュも苦笑いをしながら言う。
「で、これからどうするかだよな……」
「あの王のことだ、明日も取り立てにくるんじゃねぇか?」
「イヤイヤ、いかにせ、1日じゃ実のらねぇから来ねぇよ」
 2人の村人があたふたしながら話していた。
「皆の集、これから先、必要になるのは食料じゃ」
「そうだった、長老! 今は前買ったのがあるけど、そのうち尽きちまうだ」
「国の中で食品店は1ヶ所しかねぇだからよ、年貢でさらに値も上がるだろ?」
「そうだ、それでも手に入れなきゃいけないのじゃ」
 長老は先頭に立って言う。
 さらに、長老は提案を出した。
「金銀以外の価値の低いものでも商品にすれば売れるじゃろう」
「そうだったな。 それじゃオラは店で武器を売るだ」
 村人の1人は武器屋をやるという。
「そんじゃ、オレは防具を売るぜ、来てくれるヤツがいるかも知れねぇ」
 もう片方の村人は防具屋をやるといった。
「と、言ってもオラたちは本業なんだけどな」
 武器屋の村人が笑いを上げる。
「頼んだぞ。 では、今夜はこれにて休むとしよう」
「そうだね、長老さん。 メルもそれでいいよね?」
「いいに決まってるわよ。 それ以外することもないし」
「では、皆の集も……」
 長老が村人と解散しようとした。
 そこに1人の旅人がやってくる。
「こんにちは、えっと皆さんお揃いで」
「はて、どちらさまですかな?」
 長老がその旅人に気づいた。
「通りすがりやの旅人です。 ちょっと剣を拝借したくありまして」
「おぉ、早速お客様ですか。 武器ならあちらの店に」
 長老が武器屋の方角を示した。
「こっちだ旅人さん」
 武器屋の村人が旅人を呼ぶ。
「これはご親切に」
 旅人は武器屋の村人へついていく。
 その旅人は店の中に入っていた。
「お客が来るなんてグッドタイミングだね」
「そうね、これで少しは足しになるわよ」
 2人は客が来たことに笑みを浮かべる。
「それでは我々は解散と言うことで」
 そういうと長老は村人と離れ、家の前に行いった
 扉を開けると、振り返って2人を呼ぶ。
「早く来るのじゃ。 明日からは栽培を手伝ってもらうぞ」
「あ、うん。 いいよ! 住まわせてもらうんだし」
「わたしも同意見で。 金属の植物も見てみたいしね!」
 長老が先に入り、2人は追って家に入った。
 村人たちも自分たちの家に帰っていく。
 彼らはその後、ここで手伝いをしていった。
 そして、1週間が過ぎ……
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