彼らは故郷の村を去り、別の場所へ向かう。
 時々振り返りながらも、前に進む集団。
 目の前に山脈が覆っていた。 海岸沿いに沿って浅くなっている。
「うーん、山っぽいのが多いね、やっぱり表面は金属?」
 コッシュは立ち止まって、先に見える山を指して言った。
「そうじゃよ。 金属の木や草がある。 殆どが雑金じゃがの」
「ふーん、雑金かぁ。 雑草みたいなモノね」
 コッシュは解釈して、再び歩き出す。
 フアンを先頭に、鉄、錫を持つ村人たち。
 山脈の横を通って南側を西に流れていった。
 結構進んだところで、村人が振り返る。
「オラたちの村ルーエもあんな、遠くなってしまったんだな」
「武器屋! 泣くでねぇ、オレたちは必ずまた帰ってくるんだ!」
 防具屋の人は武器屋の人を肩を持った。
 村人たちは皆、同じ気持ちだと思われる。
「もう少しで、ライノの村があるはずだ。 急ごう」
 フアンは早期到着を目指して行く。
 長い道のりを超え、先に村らしき建物の集合地が見える。
「とりあえず、あそこで休もう。 まだ長いからね」
「そうなんだぁ、っというか、エビフライはどこから来たのかな?」
 コッシュはビフラが来た場所が気になった。
 フアンはすぐにソレに対して返事をする。
「ビフラは恐らく、村の北にある地帯から来たんだよ。 そこに本拠があるからね」
「じゃあ、僕たちもそっちから……」
「それが出来たら苦労はしないさ」
 フアンはコッシュの質問に即答する。
「船を使って来たんだ彼らは。 だから拙者らも船のある村を目指している」
 フアンは説明する。 コッシュはその説明に納得した。
 しかし、1つだけ疑問に思うことがある。
「もしかして、その船って全部金属?」
「そうだとしたら沈みそうね……」
 2人は悩み顔をした。
 フアンは微笑を浮かべて返す。
「いや…… そうでもないよ。 魔金というモノを使うんだ」
「魔金?」
 聞いたことの無い言葉にコッシュが反応する。
「拙者も詳しくは知らないが、金属の融合から生まれた魔法の金属だとか」
「へぇ――。 それはスゴいね」
「っと、気が付けばライノの村がある。 そこでゆっくり話そう」
 3人と村人たちはそのまま村へと入る。

 だが、村の人たちは彼らが来ても無反応。
「ちょっと、いいかな?」
 フアンがライノの人に声をかけて回る。
 だが、無視されてしまうばかり。
「みんなシカトかよ……」
 コッシュは見ていて嫌気が差す。
「おかしいのぉ、ライノの村とは昔から交流が……」
「恐らく、口止めか何かをされているんでしょう」
 フアンがこちらに戻ってきた。
「口止めじゃと? やはりビフラか……」
「拙者ら一同の行動は想定内ってことでしょうね」
「でも、行く先々これじゃ、いつか尽きるよ……」
 コッシュはため息をつく。
 しかし、彼の言うことは間違いない。
「そうだ。 だから、拙者らは何としても手に入れる必要がある」
「力ずくはダメだよ。 それじゃビフラと同じだから」
「大丈夫、もう少し交渉を続けるだけだから」
 フアンは笑って言った。
 その言葉にコッシュは安心する。
 その後、男の子がやってくる。
「あんちゃんたち、困ってるだか?」
 無邪気に声をかけて来た。
 元気に飛び跳ねていそうな子供だ。
「そうだよ。 食糧が欲しくて回ってるんだけど……」
 フアンが優しく尋ねる。
 子供はそれを聞くと、どこかへ走っていった。
「ちょっと待ってくろ。 ボク、おっかあに相談してみるから」
 子供は途中立ち止まり、振り返って言う。
 コッシュはなぜか、その子供の後を追った。
 フアンもコッシュの行動で、不審な気配に気づいたが遅い。
「伏せろ!」
 コッシュは叫び、子供は伏せる。
 その時、矢が子供に目掛けて飛んできた。
 コッシュが剣を使い、それを叩き斬る。
 矢はその場で真っ二つになって落ちた。
「危なかったね…… ケガはないかい?」
 コッシュは子供のほうをに目を向ける。
 子供は心臓を押さえながら立ち上がる。
「こ、怖かっただ……! あんちゃんありがとう!」
 子供は満面の笑顔で答えた。
 コッシュは危機回避を出来て安心する。
 子供はその後、家に戻っていった。

「待てッ!」
 フアンは矢の方向へ走っていった。
 しかし、途中で見失う。
「さっきのは、やはりメタルジャー。 手を貸せば死ぬ、という見せしめか」
 フアンは立ち止まって言った。
 それ以上、追えないので引き返す。
「おかえり。 で、どうだった? フアンさん?」
「取り逃がしてしまった。 だけど、メタルジャーに間違いないよ」
 フアンはガッカリした顔で帰ってきた。
「そっか、まあ仕方ないよ。 とりあえず、兵が見張ってることはわかったんだし」
 コッシュは慰めるように言う。
「っていうより、コッシュの剣サバきのほうが凄くない?」
 メルが気になったのはコッシュの行動。
 剣はあの洞窟の脱出時以来使ってない。
「それに、あの子が狙われていることを瞬時に察知してたでしょ?」
「あぁ…… 何となくだよ。 僕の何かが働いたんだと思う」
「何かって何よ……」
 メルは訳がわからなくて呆れた。
「でも、その何かのおかげで村の子が助かったわけだからね」
 フアンはコッシュを褒める。
 コッシュは嬉しそうな顔をした。
 その後、子供とその母親が家から出てくる。
「どうも…… 我が子を助けていただいたようで、何とお礼を言ったら……」
「いやいや、大したことはやってないし気にしないで!」
 コッシュは鼻を高々に上げて答える。
「お礼ですか…… よければ食糧を少し頂けませんか?」
「わかりました、村の長に相談してみます」
「助かります、よろしくお願いしますね」
 フアンはそれで待つことになった。
 子供がコッシュに話しかけてくる。
「ボク、大きくなったらあんちゃんみたいに強くなる!」
「ガンバって! 僕も応援してるからね」
 コッシュはにこやかに返し、頭を撫でた。
 その様子を見てメルが冷やかす。
「コッシュが尊敬されるなんて奇跡だわ」
「むっ! 僕だってそういうことぐらいあるもん」
 そうこういっていると、ライノの長がやってくる。
「村のモノを助けてくださったのは、あなたですね?」
「うん、そうだけど…… 大したことじゃないよ」
 コッシュはそういいつつも、自分の頭を触りながら照れている。
「ということは反乱軍とはあなたたちですか……」
「ということになるでしょうね」
 フアンが間に入って答える。
「では、食糧をお持ちください。 ギリギリまで詰めて置きました」
 すると、ここの村長の家から人力車で食糧が出てくる。
 それが満杯になるほどの肉と握り飯だ。
「用意してくださっていたんですか?」
 用意周到さに驚くフアン。
「いや、これらはビフラ王への献上用でした」
「ってことは、我々に賭けるってことですね?」
 フアンは手を強く握り締めた。
「そういうことになります。 どうか、新王を倒してください」
「わかってる。 絶対、フルボッコにしてくるから」
 コッシュは真剣な瞳で言う。
「それでは、行って参ります」
 フアンがそういうと、一同は手を振って去る。
「お気をつけて。 我々の分までお願いします」
 そして彼らはこの村を後にする。
 再びメタリックフィールドに出た一同。
「おかえり、フアンの旦那! それからコッシュとメルと村長!」
「ただいま。 この先もビフラがいそうな空気だよ」
 フアンはそういって、これまでのことを説明する。
「へぇ、大変だったんだなぁ。 で、その荷物が礼品かい?」
「そうだよ。 だけど、ちょっと重いよね、これ」
「大丈夫だ。 俺らがそれは運ぶ。 力仕事は武器屋と防具屋に任せろ!」
 武器、防具屋の2人が率先して人力車を運ぶ。
「頼りになるわね。 コッシュとは大違いね」
「しょうがないじゃん。 僕はデリケートなんだから」
 2人はいつものトーク。 そこにフアンが割り込む。
「それでは、行こう。 もたもたしていると夜になってしまう」
「そうだね。 早く行こう!」
 一同は再び移動を始める。
 そして、歩くこと2〜3時間が経過。
 明かりがだんだん暗くなって見にくくなる。
「ん、あれは……」
「アルバ城。 じゃが、醜いことになっておる!」
 そう、彼らがそこで見たもの。 それは廃墟だ。
 溶けた鉄くずだけが残り、辛うじて立っている柱。
 跡地は真っ黒に広がっていて、暗い雰囲気を漂わせる。
「ビフラ。 ここまでやる男か……」
「急ぎましょう。 完全に夜になる前に!」
 長老は悔やみながらも今は先に進むことを勧めた。
「そうですね。 それで行くとすれば北のトラ橋すぎか」
 そういってフアンは再び一同を連れて歩く。
 そこからさらに2〜3時間が経つ。
 もう辺りは真っ暗になった。
 だが、トラ橋の近くまでやって来ている。
「薄暗くて見にくいけど、あの橋?」
「そうだよ。 そうすればルハナという船村が見えるはずだ」
「早く行くわよ。 橋を渡れば休めるんだから」
 そういってメルが先陣を切る。
 一同は、トラ橋の手前までやってきた。
 橋は鉄で出来ており、手すりもある親切設計。
 とはいうもの、下との距離は高くて落ちれば急流の川。
「さぁ、渡るわよ!」
 メルが橋を渡り始める。
 その時、コッシュに嫌な気配を感じた。
 コッシュはとっさに、メルの腕を掴んだ。
「何してるのよ、コッシュ!?」
 メルは怒って言う。
 だが次の瞬間、橋が崩れ落ちた。
「って…… 何で橋が落ちるのよ!」
「ふぅ。 メルが無事でよかったよ」
「コッシュ。 ありがとう……」
 メルの頬が少し赤くなった。
「いやいや、どういたしまして」
「ホント、メルが無事でよかったよ」
 フアンも一息ついた。
「しかし、今の崩壊。 ビフラが絡むか……」
「でしょうな。 これは何千年と崩れたことの無い橋じゃからのぉ」
「ここを使わないとなると。 どうするの?」
 コッシュは首をかしげて聞く。
「いや、方法は他にもある。 ただ、今日は休もう」
「そうだね。 それじゃ準備しよっか?」
 そういって一同は橋より少し南にテントの準備をする。
 テントと言っても金属で作るので少し時間がかかる。
「ようやくできたな。 では各自部屋で寝よう」
「僕たちはメルとフアンさんのグループでいいよね」
「メルは女の子だよ? いいのかい?」
 ちょっと心配そうに言うフアン。
「別に構わないわよ、わたしは」
「じゃあ、就寝しようか?」
 彼らは真ん中のテントへと入っていった。
 そして、そのまま眠る。
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