「朝だよ。 2人とも」
 フアンがコッシュとメルを揺する。
 メルは直ぐに目を覚まして起き上がる。
「わたしとしたことが、起こされるなんてね」
「いや、寝たのが遅いし仕方ないよ」
 だが、コッシュがまだ起きていない。
「コッシュ、あんたも起きるのよ!」
 メルがコッシュの体を揺すった。
 すると、いつもになく直ぐに起きる。
「おはよう、メル。 今日もいい朝だね」
「寝ぼ助のコッシュが、珍しく早いわね」
「う――ん。 何かメルに起こされると、起きないと投げ飛ばされそうで」
「わたしはそんなことしないわよ! オッさんじゃないんだから」
 メルはそういうが、コッシュは納得してない様子。
「そうかなぁ。 ありえないことはないと思うんだけど」
「いいから、早くしなさいよ。 ちゃんと剣持って」
 メルはコッシュの肩を叩いて急かす。
 コッシュはゆっくり手を動かして剣を取った。
「そうそう、もう他のテントは片付けてあるから」
 フアンはそういうと外に出た。
「えぇ…… みんな、早いね」
「早いねじゃないわよ。 わたしたちも行くわよ」
 そう言って、テントから出た。
 昨日まであったいくつかのテントは消えて無くなっている。
「じゃ、これもさっさと畳んでっと……」
 ルーエ村集団に掛かり、あっという間にテントは消える。
「では、出発しよう」
「でも、どこに?」
 コッシュは疑問に思った。
 なぜならトラ橋はもう無いのだから。
「大丈夫だ。 トラシア山脈というものがある」
「そこから行けるんだ?」
「ただ…… 2つ問題があるんだ」
 フアンの顔が変わる。
「1つ目は、道が入り組んでいること」
「そりゃ、山脈だからね」
「それくらい、どうってことないわよ」
 コッシュとメルは過去の探検経験がある。
 だから、そんなものは他愛ない。
「そうだよ。 ただ2つ目が問題なんだ」
「魔物が住み着いてるってことじゃろう?」
 そこに村長が割り込む。
「魔物!?」
 コッシュとメルは口をそろえて言う。
「魔物ってどんなの?」
「金属獣フィジックスと呼ばれる、獰猛な肉食獣じゃ」
 それについて村長は話を進める。
「体は硬く、骨まで砕く牙があるという話じゃ」
「それに便乗し、ビフラ軍のメタルジャーもいると思うなぁ」
「そっか。 でも、全部なぎ倒していけばいいや」
 コッシュはいつもになく前向きな姿勢。
 それについて、メルが気に掛かった。
「コッシュ、何かやる気満々ね。 どうしたの、最近?」
「わかんないけど、オッさんのテンションがうつったのかも」
「勇ましいことは、いいことだよ。 それじゃ、南東のトラシア山脈に行くか」
 フアンはそういうと、一同は南東に進んでいく。
 そして、山脈の前に辿り着いた。
「ここが山脈の入り口。 ここの道は人の手で作ってあるから進めるんだよ」
「ただ、通る人がいないから魔物やら住むようになったんじゃがの」
「そうなんだね。 まぁいいや、早く入って抜けよう!」
 コッシュはそういうとどんどん奥へ入っていく。
 フアンの言う通り、入り組んだ流れの道だ。
 鉄梯子があったりと、少し面倒なところもある。
 中で、水滴が落ちたりと鍾乳洞な感じもした。
「どうやら、メタルジャーは、かなりウロついているようだ」
 見える範囲でフアンは斬り捨てていく。
「そうだね。 僕たちが村の人をかばいながら進むしかないか」
 コッシュは背後を気にしながら進んだ。
 メルは少し前向きに考える。
「ここで、剣の腕磨きも出来て一石二鳥ね」
 メタルジャーがたびたび現われ、撃破する。
 これを繰り返すうちに強くなってきていた。
「まぁ、それもそうだね。 実験台に丁度いいよ」
 コッシュもそれには便乗する。
 そうこういっているうちに、洞窟の中央部まで来た。
「この辺で、フィジックスがくるんじゃない?」
 コッシュは若干、様子を見て歩く。
 すると突然、目の前に獣が現われた。
 ヨダレを出し、いかにも食いつきそうな顔。
 見た目は虎だ。 だが、全身、鉄の鎧でも着ているかのようだ。
 それでも、フアン、コッシュ、メルは恐れず立ち向かう。
「いくぞ! コッシュ、メル!」
 まずはフアンが突撃した。
 フィジックスも同じく牙を向く。
 フアンはそのまま体を斬りつける。
 しかし、フィジックスに対してダメージは少ない。
「うーん、硬いねやっぱ」
 コッシュも同じく切り付けに行く。
 やはりダメージは薄い。
 それどころか、フィジックスから反撃を受ける。
 辛うじて急所を免れたが、少し怪我をする。
「大丈夫か? これを飲むんだ」
 フアンは特殊な薬を出す。
 それを飲むと、すぐにその傷が治った。
「それは拙者の調合薬だからね」
「ありがとう、フアンさん」
 そうこういっているうちに、メルが飛び込む。
 獣はメルに噛み付こうとした。
 獣の落下直前に、メルは口を目掛けて剣を投げる。
 すると、そのまま口に突き刺さり、血が飛び出した。
 さらにメルは素手で硬い体を叩き割る。
 魔物はそのまま倒れた。
「ってメル、強っ!?」
 コッシュはあまりの速さに驚いた。
 フアンも驚きの顔を隠せない。
「案外、弱いわね。 こんなのに怖がってたらダメよ」
「頼もしいよ、メル。 さあ、行こうか」
 そう言って、何事も無かったか如く進んだ。
 そして何だかんだ言って、山脈を抜ける。
「山脈も魔物以外は怖く無かったって感じだよ」
「そうだね。 だけど、コッシュやメルの腕は上がったと思うよ」
 洞窟内の無数にいるメタルジャーがいた中を越えた。
 それは立派になった証拠だ。
「それで、後は西に進めばいいのよね?」
「そうだね。 あと一息で、船村ルハナだよ」
「それじゃ、早く行って船に乗ろうね」
 そう言うと再び移動していく一同。
 道沿いを歩き、ルハナへと着いた。
「それじぁ、拙者と村長は船交渉をするから」
「僕たちはどうしていればいい?」
「自由行動をしててくれ。 道具や装備とか見るのもいいだろうし」
「そうね。 それじゃ、後は頼んだわ」
 メルがそう言った後、フアンは村の奥へと歩いていった。
 連れの人も今は解散していなくなる。
「じゃ、メル。 僕と一緒に行動しようね」
「そうね。 これから先に必要なモノはここで揃えるわよ」
 2人は色々店を回ることにした。
 とりあえず適当に道具を揃えた2人。
 すると入り口付近でフアンがいる。
「ただいま。 とりあえず船は借りれたよ」
「よし、これでエビフライに一歩近づくんだね」
「そうね。 ビフラ、首を洗って待ってなさい!」
 その後、他の人も帰ってきた。
 その中で、武器屋と防具屋は沈んでいた。
「さすがに都会の武器防具は違うなぁ。 俺自身が小さく見えるよ」
「オラもだ、いいモンはいいモンな……」
「元気出してよ、2人とも。 きっと、この先いいこともあるから」
「ありがとよ、コッシュ。 俺もコイツも気長にガンバるさ」
 それで、その後全員が集合する。
「それでは行こう。 打倒ビフラ!」
 その掛け声と共に走り出す。
 全員が船に駆け込んで出航した。
「へぇ…… 本当に浮いてるね」
「水に浮かぶ金属。 魔金って不思議ね……」
「ここからムヤってところに行くけど。 あっという間だと思うよ」
「そっか、海を眺めている暇も無いぐらい……」
 コッシュが話し途中で、止まる音がする。
「っと着いたようだ。 ムヤという船村だよ」
「早っ! もう着いたの?」
 コッシュは驚きに戸惑った。
 あまり揺れも感じずについてしまう。
「それでは、先に進もう。 ムヤは通過点に過ぎないからね」
 フアンがそういうと、その後に続き歩いていった。
 そして、ムヤを後にしてビフラ城を目指す。
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