「時間が過ぎるのも早いな、シェイド……」 
 シュラムがしみじみと言う。
 稽古してから1ヶ月が経った。
 シェイドは前よりも強くなっている。
「いずれ、本当の強さを得たアンタと……」
 シュラムは小声で言った。
「何か言ったか?」
「いや、なんでもない」
 数日前、一通の手紙が届いた事を思い出した。
「そういえば、アンタ宛に手紙がきてたぜ」
 腰から手紙を取り出す。
 それをシェイドに手渡しをする。
 シェイドは手紙を裏返し、差出人を確認した。
「誰からだ?」
「俺の先輩のアルトという人からだ」
 アルトは同じく、この神殿で修行をし終え、出て行った人。
 シェイドにとっては尊敬する人且つ、友人でもある。
「ま、とにかく読んでみろよ」 シュラムが迫る。
 シェイドはうなずき、手紙を開封する。
 そして、じっくりと中身を読んだ。
「ルスキニアか……」
 ため息をつきながら、顔を上げるシェイド。
 綴られていたのは、アルトからの誘い文句だった。
「どうしたんだ?」
 それを見て、シュラムは不思議そうな顔をした。
 複雑そうな顔に疑問を浮かべる。
「来ないかって。 ルスキニアに」
「行くのか?」 
 シュラムはシェイドに問う。
 シェイドは声にしてうなずく。
「別に、止めやぁしない」 
 いつもの態度で大らかに流す。
「シュラム…… 世話になった感謝しきれない」
「気にすんな。 俺もアンタといると飽きなかったしな」
 さらっと済ますと、シュラムは姿を消した。
 シェイドは神殿へ戻っていく。
 廊下を歩いて戸を開け、自分の部屋に入る。
 旅の支度をする。 服を変えて、リュックに食料を入れる。
 腰に剣があることを確認すると、部屋を出る。
 そして、神殿の門をくぐり、神殿領内の外にでた。
 辺りは暗く、少し風が冷たい。
 鳥の鳴く声が聞こえる。
 外はやはり、違う空気を感じる。
「それで…… ルスキニアはどこだ」
 道も知らず、唐突に出てきたため、わからない。
 そこに、シュラムが目の前に出現する。
 シェイドは驚いて腰を抜かす。
「アンタ、全然成長してねーな!」
 シュラムは、大笑いをする。
「もっと、まともな登場は出来ないのか」
 呆れた顔でシュラムを見る。
「悪い悪い…… で、そんなこんだと思って来てやったんだ」
 申し訳ないという顔をしながら、ふところから地図を取り出す。
 着地してから、それをシェイドに手渡しする。
 地図には、ここの大陸が大体描かれていた。
「それを使えよ、オイラが昔描いた地図だ」
「いいのか?」
 シェイドは遠慮気味に答える。
 色々世話になったのに、またもかと。
「いらんなら返せ。 それ1枚しかねーんだから」 
 シュラムは少し、しかめ面になった。
「いや、ありがたく貰う」 
 シェイドは笑いながら答えた。
 そして、さよならの挨拶を済ます。
 シュラムと別れ、貰った地図を見て進んだ。
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